• 2011年入社(中途入社)

    佐藤 利夫

    地熱事業ユニット 海外地熱グループ マネージャー

  • 2010年入社

    田中 太一

    アメリカ・アフリカ事業本部(ヒューストン事務所駐在)

プロジェクト概要

エネルギーの未来を見据え、INPEXは、再生可能エネルギーへの取り組みの強化を事業目標に掲げている。その挑戦の一つが、2015年6月に正式参入したサルーラ地熱IPP(独立系発電事業者)事業だ。インドネシア・北スマトラ州の奥地に、単一開発契約としては世界最大規模の地熱発電所を建設・運営するという壮大かつ困難なプロジェクト。成功を支えたのは、目標達成への強い想いとチームワークだった。当時の苦労と喜びを、経験豊富なマネージャーの佐藤と、若手技術者であった田中が語る。

  • 本対談は、現在、田中が海外駐在中であるため、テレビ会議システムを通じて行いました。

参入前から参入後まで、初めて尽くしの案件だった。

佐藤:
久しぶりですね! 田中君がプロジェクトを離れたのが2017年3月ですから、こうして話すのは2年ぶりですね。また地熱開発の仕事を一緒にできたら嬉しいですが、田中君のように優秀な人材はどの部署でも引っ張りだこですからね。いまは、海外でどのような仕事をしているのですか?
田中:
サルーラでは本当にお世話になりました。現在はアメリカのヒューストンに駐在し、主にメキシコ湾における石油・天然ガス開発に携わっています。サルーラプロジェクトでの経験が大いに役立っていますし、自分自身が成長できたという実感もあります。経験に裏打ちされた佐藤さんの冷静なプロジェクト運営から多くを学びました。トラブルに動じることなく、落ち着いて情報収集し、次の対策を考える。佐藤さんのように、私も責任をもって着実にプロジェクトを推進できるように心掛けています。

佐藤:
もともと私は商社出身で、約30年にわたり、海外向けの火力発電事業に携わり、インドネシアやフィリピンで4カ所の地熱発電所を立ち上げた経験があるんです。ご縁があってINPEXに入社した後も、インドネシアでの発電事業の可能性を追求してきました。そうして参入の機会を得たのがサルーラ事業です。INPEXにとっては、インドネシアでの地熱発電事業も、IPP(独立系発電事業者)への参画も初めてのこと。初めて尽くしの案件で苦労も多かったけれど、社内外の多くの方々の協力でなんとか成立させることができました。田中君も、初めての業務が多かったにもかかわらず、真摯に取り組んで自分のものにしていましたね。毎日のように専門家のところに通ってアドバイスをもらい、トラブルの解決にあたっていた姿を思い出します。
田中:
私がサルーラプロジェクトに携わったのは、正式参入前の2013年5月頃でした。生産(油層)エンジニアの仕事にようやく慣れてきた頃だったので、再生可能エネルギーを担当する部署への異動には不安もありましたが、新しいことに挑戦できる喜びも大きかったです。とはいえ、毎日が苦労の連続で、無我夢中でしたね。当時の担当者は、佐藤さんと、佐藤さんと同じ中途入社の地熱開発の専門家と、入社4年目の若手だった私の3人。悩みに悩んだ日々でしたが、地熱エネルギーのポテンシャルを現地で目の当たりにし、「いける!」という確信がありました。なんとかして形にしなければいけない。プロジェクトを前に進めようという気持ちでいっぱいでした。

任される範囲が幅広い、再生可能エネルギー事業の担当業務。

田中:
大きな苦労として、まず思い出すのは、参入交渉がまとまる前の約半年間のことです。私はそれまで、プロジェクトの専門的な技術検討を担当することはあっても、プロジェクトの専門分野以外の業務はほとんど経験がありませんでした。新規プロジェクト参入にあたってのデューデリジェンスやプロジェクトに特化した特定目的子会社の設立、プロジェクトファイナンスでの資金調達などはなおさらです。当社としても、海外における初のIPP(独立系発電事業者)案件であったため、社内の各部署の方々に協力を仰ぎながら、一つひとつの問題に対処していきました。もちろん、私がその業務全てに必ずしも精通することが求められていたということではなく、各部署の方々を巻き込み実現に向けて前に進めていくための推進役という役割でしたね。

佐藤:
田中君は、基本的には油層工学エンジニアですから、ここまで広い業務を担当するのは初めてのことだったでしょう。一人ひとりの業務が細分化されやすい大規模な石油・天然ガス開発に比べて、地熱開発は、一人ひとりに任される業務範囲が広いのです。交渉が締結し、正式に参入した後も、新たな挑戦が続きましたね。このプロジェクトは、いかに決められた工期内に必要とされる地下資源(蒸気と熱水)を確保できるかが一つの鍵でしたから、地下資源の評価、掘削ターゲットの選定、掘削状況の把握、トラブルシューティングなど、非常に重要な業務を田中君に担ってもらいましたね。
田中:
はい。開発井の掘削と発電所の建設工事を同時進行で行うプロジェクトだったので、開発井の能力を見ながら発電所のスペックを変更するというわけにはいきません。想像以上に特殊な地層だったこともあり、掘削は困難を極め、トラブル対応で苦労しました。生産(油層)エンジニアの私も、地質、物理探査、掘削、施設まで幅広い知識を勉強し、現場で何が起こっているのか、コントラクター(実際の各種工事作業を請け負う企業)が何をしているのかを理解するよう努めました。経験豊富な社内外の専門家の方々にサポートしてもらいながら、どうにかやり遂げることができました。

熱源を掘り当て、必要な人に電力を届ける喜び。

佐藤:
発電するために必要な蒸気と熱水は確保できたものの、蒸気と熱水を発電後に地下に戻す断層を見つけることができず、悪戦苦闘した日々もありましたね。その断層を確保できたときは、飛び上がるほど嬉しかったことを覚えています。こうして、多くの方々に助けられ、世界有数の発電容量を誇る地熱発電所を完成させることができました。2017年3月、第1号機の商業運転が無事に開始されたときは感無量でした。
田中:
私はちょうどその直後にプロジェクトを離れてしまったので、実際に発電所が運転している様子を見ることはできなかったのですが、商業運転開始のニュースや安定操業の報告を聞いて本当に嬉しかったです。これまでの苦労が報われました。またインドネシアの人々に恩返しができたという思いもありました。石油や天然ガスだけでなく、電力についても、必要としている人々に安定的に供給していくのがエネルギー会社である当社の使命。そのことを、あらためて胸に刻んでいます。

佐藤:
そうですね。東南アジアなど、まだ十分に電気が行き届いていない地域が世界にはたくさんあります。そういった地域に電気を供給することで、人々の生活向上や地域経済の活性化に貢献できることが喜びであり、この仕事のやりがいですね。発電所を建設した後、その地域を訪れてみると、年々、人々の生活レベルが向上していることがわかります。サルーラ発電所は、社会貢献活動として現地の小中学校の無償教育や雇用の創出などにも貢献しています。これからさらに、現地の人々の暮らしが豊かになってくれればと願っています。

再生可能エネルギーの未来へ向かって。

田中:
地熱開発も石油・天然ガス開発も、探鉱から生産開始に至るまでの流れはほぼ同じです。データを駆使し、地上からは見ることのできない地下がどのような構造になっていて、何が起こっているのかを想像し、最適な開発をしていくのです。私は、学生時代は資源工学を専攻しており、再生可能エネルギー開発の知見はありませんでしたが、「地下の流体を扱う」という点では、地層内での熱水の動きは、油層内での油ガスの動きと共通点があり、とっつきやすいものでした。地熱発電所を構成する各設備の大半も、入社後の研修時に、天然ガスプラントで働いた経験があったので理解しやすかったです。
佐藤:
INPEXには、様々なバックグラウンドをもつ人が活躍できるフィールドが広がっているということですね。石油・天然ガス開発だけでなく、再生可能エネルギーの分野でも、興味と熱意があれば最前線で活躍することができる。田中君は、まさにそれを体現している一人です。3人から始まったプロジェクトでしたが、その後、社内には地熱事業を始めとした再生可能エネルギーを担当する部門が新設されました。再生可能エネルギー事業への参入は、今後もさらに重要性を増し、加速していくでしょう。サルーラ事業が、その先行モデルとしての役割を果たせるよう、マネージャーとしてさらに力を注ぐつもりです。

田中:
私も、地球温暖化の原因とされる温室効果ガス排出削減のためには、再生可能エネルギーの普及が欠かせないと思います。とくに、パリ協定合意以降、低炭素化が社会の要請になりつつあると感じています。INPEXには、石油・天然ガス開発で培ったさまざまな知見を共有できる強みがあります。再生可能エネルギーに興味のある人、未来のエネルギー開発に挑戦したい人には、これ以上の舞台はないでしょう。最後に佐藤さん、私の勤務しているアメリカでも、ぜひ再生可能エネルギープロジェクトを進めてください。待っています!